社長さんとお話したいのですが、



「お宅の社長さんと面会したいのですが」

「残念ながらだめです、社長はいません!」

「だって窓を通して社長さんを見ましたよ!」

「社長もあんたを見たよ」






„Ich möchte Ihren Chef sprechen.“
„Geht leider nicht, er ist nicht da!“
„Ich habe ihn doch durchs Fenster gesehen!“
„Er Sie auch.“












社長さんだって人間、会いたくない人もいることでしょうね。

窓を通して外から中を見る、または見れるということは日常、良く経験しています。

窓を通して内から外を見る、または見れるということも良く体験します。

住宅街を歩くと窓のカーテンの後ろから見えない視線を感じることが
わたしには多々あります。
あなたは見られている。スパイされている?


ドイツのある田舎町の道を歩いていたら、まあ、オーストリアでもあったことですが、
ある農家でしょうか、ひょっと顔を上げたらちょうど2階の窓から上半身を乗り出す
かのようにしてわたしが道路に沿って歩いているのを観察していたらしい。

窓を通して、というか窓を開けたまま、まさか頭上の窓が開け放たれたまま、
そこには老女が何もすることがないのか、窓の外の様子を眺めるのが趣味なのか、
まるでわたしを監視しているかのよう、わたしの一挙手一投足をじっと目を凝らして見ていたらしい。

見られぬ人間、東洋人がこんな田舎町にもやってきて歩いているとは、
なにをしているのだろうか、そんな思いでじっと観察していたのかもしれない。

しばらくしてもう一度、同じ窓の方に視線を投げかけたら老女は消えてしまっていた。
わたしが彼女の所へと顔を出すかもしれないと恐れたのかも知れない。
会いたくはないと思って姿を消したのかもしれない。
わたしは社長に、いや老女に会いたいわけでもなんでもなかったのですが。

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