父親が息子に言った。
「今日はお前に”礼儀正しいということ”と”無礼であるということ”、
この二つの概念について説明してあげよう。電話帳を持って来なさい。
そしてどんな番号でも良いから選び出しなさい」
父親はヘリベルト・ボルシュタインとか言う名前の人の電話番号にダイヤルした。
「こちらはシュナイダーと申します。息子さんのエラスムス君とお話したいのですが」
「わしには息子はいない。お宅は電話番号を間違えたに違いない」
通話は終わった。
「わかっただろう。今のが礼儀正しいということだ」
父親はもう一度同じ番号にダイヤルした。
「息子さんのエラスムス君とお話をしたいのですが」
「わしには息子はいないよ。そう伝えただろう。お宅はバカか?」
と相手は受話器を受台にガチャンと大きな音を立てて収めた。
「わかっただろう。今のが無礼であるということだ」
「今度は”何だか考えさせられること”をボクが見せてあげるよ」と息子が言った。
息子は同じ番号にダイヤルした。
「ボルシュタイン!」
「あっパパ、エラスムスだよ。誰かボクに電話してきた?」
Höflich und Unhöflich→
* *
なんだか考えさせられますか、考えさせられましたか。
既成概念に囚われない考え方だ!?(笑)
* *
電話の受け答えに関してのマナーは如何なものなのか、ということですね。
如何なものなのか、とは何が正しいマナーなのか、ということになるかとも思いますが。
例えば、あなたはこちらから相手側に電話を入れる。
相手側が受話器を取りました。
あなたは自分の名前を先ずは名乗りますか、それとも名乗ることせず、直接、用件について喋り始めますか。
目指す相手が電話口に出ているとは限らないかもしれませんよね。
* *
今度は相手の立場から観察してみましょう。
あなたから電話を受けた「相手」は何と言って受けますか、
それとも受話器を取り上げたら、口を閉ざしたまま、誰が電話してきたのか、何だろうか、と聞き耳を立てますか。
(わたしはこうしたことを実験的な思いを込めて(確信犯的に?)機会を捉えてはやむなくやります。
それは正しいマナーなのですか!?と問われれば、ドイツ語では Jein と答えるところでしょうか。つまり Ja であって Nein でもある。ある面では Ja, ある面では Nein。ある面とはどんな面?)
* *
ボルシュタインという人は受話器を取ったら先に名乗っていますよね。
この名乗り方とでもいうのでしょうか、はじめて体験したときにはちょっと戸惑ってしまいました、というか
余りにも冷たく響く応対ぶりにビックリしたものでした。なんだ!? この応対ぶりは! と。
オーストリアにやってきて、何もオーストリアに限らないかと思いますが、
電話をすると相手が自分の名前を言いますよね。
尤も言わない人もいるのかもしれませんが、名乗るということが普通、想定されているようです。
わたしもある日、ある時、電話をしなければならないので電話をしました。
まだドイツ語での電話には慣れていませんでした。
ドイツ語で電話することがとっても難しく感じられたものです。
知らない人に電話する。しかもその知らない人の応対に対して自分は理解出来るだろうか。
理解出来るだけの語彙力、聴解力があるとは自信を以って言うことは出来ないと自分では感じていました。
要するにまだ慣れていない、自信がない。
分からないなら分からない、理解できないなら理解出来ない、もう一度言ってください、と告げれば良いのに決っているのに、そうすることになぜか躊躇を感じてもいる自分でした。そういうことさえもが思い浮かばない緊張振りとでもいいましょうか。電話恐怖症?(笑)
「ボルシュタイン!」
その言い方が実にぶっきら棒に聞こえたものでした。そんな風に聞こえませんか?(笑)
聞く人の気分次第かも。
何とも味気ない反応の仕方か!? とわたしは最初、憤慨遣る方無い思いをしたものでした。
冷たい、そして不審。
* *
こちらの息子さんは何をしているのでしょう?
父親と同じように同じ電話番号に父親は2回、そして息子としては1回電話していますね。
通算3回、同じ人の所に電話していますよね。その同じ人とは誰のことかは判別出来ますよね。
この人にとってはいい迷惑でしょう。いわゆる何度も同じ人に電話を掛ける。それを何というかご存知?
電話いたずら? いたずらと言うだけでは弱すぎます。それこそ無礼そのものでしょう。
* *
またまたオーストリアのでわたしの体験ですが、本当に何度となく、毎日少なくとも1回は電話してきていました。昨年、師走時でした。我家の固定電話に電話してくるのですね。
わたしは入って来る電話番号はチェックしていました。毎回、同じ電話番号。どこから電話してくるのか!?
インターネット上で電話番号を調べてみました。やっぱりでした。勧誘の電話でした。
電話してくる側はいわゆるコールセンターというのでしょうか、電話帳に載っている電話番号を片っ端から
ダイヤルして、しかもダイヤルはコンピューターが定期的に自動的にするように設定してあるのではなかろうかと勘ぐっていましたが、現場でどのように機能しているのかは知りませんので、憶測に過ぎません。
まあ、もう既に長くなっていますので、また機会がありましたら、続きを続けましょうか。
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